灰色のピーターパン

小説を始めました 人生初の試みです このはてなブログで小説を書くことが正しいのかは不明ですが好きなように綴っていきます

音を売る人 第6話「真剣」

午後1時半 カーテンの隙間からは暖かい光が差し込んでいた 俺は傷の付いたちゃぶ台に肘をついて薄型の液晶が映し出すお昼のワイドショーを眺めていた ワイドショーでは中高生に今、人気とされているスイーツが特集されていた 土曜日の昼下がりだと言うのに外…

音を売る人 第5話 「金」

「波多野って言います 宜しくです」 池袋にあるお馴染みのリハーサルスタジオ そこに波多野と俺たち3人はいた 浩充は明るく受け答えをしていた 「冴島って言います みんなから浩充って下の名前で呼ばれてます よろしく」 2人が握手を交わすと、孝太も続いて…

音を売る人 第4話「創作」

バーコードリーダーを握る深夜1時 俺は薄汚れた作業着姿の男が選んだ惣菜パンとペットボトルのお茶の会計を済ませるとお釣りとレシートを渡した 男が何も言わずに退店していくのを確認すると耐えきれず、大きな欠伸をした 俺は未だにコンビニのアルバイト生…

音を売る人 第3話 「ケジメ」

「すいませんでした!」 俺と浩充と孝太は正座で横一列に並んでいた 3人とも頭を下げ、おでこをフローリングの床にくっ付けた状態をキープしていた 再び例の1LDKで今度は詫びを入れている この様は滑稽としか言いようがなく、孝太に関しては客として初めてこ…

音を売る人 第2話 「売人」

俺は今、1LDKと言うモノを体感している ここは、西新宿の高層マンション 窓からの景色は良い眺めであった しかし、俺の目の前で繰り広げられている光景は最悪の眺めだった 革製のソファに腰を掛けるのは俺と浩充 そして、そのすぐ近くの椅子にもたれているの…

音を売る人 第1話「はじまり」

艶のない青いカプセルが一錠、小さな丸テーブルの上に置かれている それをただただ見つめながら深い深呼吸をすると、ペットボトルの水を一口飲んだ 8畳しかないアパートの汚れた窓から淡い光が漏れ出すと白いカーテンを開け、外の様子を確認した 自転車に跨…